
2026年9月28日 17:25
最近、国会議事堂内にある食堂のメニュー表に記載された、とある表記がSNSを中心に大きな話題を呼びました。
メニューの最下段に刻まれた「保存料・添加物などの発がん性物質を使用することなく、食材を厳選して提供させていただいております」という一文です。

一見すると「安心・安全に配慮した素晴らしい取り組み」のように思えますが、なぜこれが大きな議論や批判へと発展しているのでしょうか。
以下私が見かけたXの投稿をシェアさせて頂きます。
・・・と、いろんな意見が出ておりましたが、私個人としては首都東京のど真ん中で「保存料・添加物などの発がん性物質を使用することなく、食材を厳選」されたメニューがこの価格なのか!?とおそらく税金による食事補助?にやっかんでおります(#^ω^)
そんな今回は食品添加物を扱う現場の視点も交えながら、政治家や高級官僚が口にする食事と、自ら食事を選べない子どもたちの給食、そして社会全体における「食の安全格差」について考えていきます。
1. 「選択できる大人」と「選択できない子ども」の対立構造
民間事業者が運営する食堂が、独自の方針としてオーガニックや無添加の食材を採用し、それをメニューでアピールすること自体は自由であり、何ら法的な問題はありません。
しかし、多くの人々がモヤモヤとした違和感や不満を抱いた根本的な理由は、「政治や行政の中心にいる人々が自分たちの安全・安心には配慮する一方で、子どもたちが毎日食べる学校給食には同様の配慮が見られないのではないか?」という疑問点にあります。
実際に海外に目を向けると、例えば欧州連合(EU)などでは「予防原則(科学的な確証が完全でない段階であってもリスクを回避する措置をとる)」に基づき、子ども向け食品や特定の食品に対してリン酸塩の使用制限や着色料の警告表示義務といった厳格な規制が敷かれています。
食品添加物の多くは、安価で長持ちし、見た目や味を整えるうえで現代の食卓に欠かせない存在です。
しかし、成長過程にある子どもや妊婦への健康影響を懸念する声があるなかで、「制度を作る側は安全とされる無添加を選び、庶民や子どもには添加物を含む食品を一律に許容している」という構図に見えてしまうことが、強い批判を生む背景となっています。

2. 市場における「無添加・オーガニック」の流通と価格差の実態
では、一般的な市場において、乳幼児や妊婦といったデリケートな層向けの無添加・オーガニック食品はどの程度流通しており、どれほどの価格差があるのでしょうか。
実態を調べると、決して「富裕層しか買えない特別なもの」というわけではありません。
- ベビーフード(離乳食) 一般のドラッグストアで買える大手メーカー品も、国の厳格な「乳幼児用規格適用食品」の基準を守って作られています。一方で、より徹底した無添加・有機JAS認証の離乳食(パウチや野菜フレークなど)も、生協(コープ)や専門ECサイトなどを通じて広く流通しています。
- 価格帯の比較 一般的な離乳食パウチが1食100円〜180円程度であるのに対し、完全無添加・オーガニック品は300円〜600円程度と、約2〜3倍の価格差が生じます。
購入する側の実情としては、すべての食事を有機・無添加で揃える家庭ばかりではなく、「離乳食の初期だけ」「週末だけ」「外出時だけ」といった形で、予算に合わせて使い分けている中間層も多く存在します。
このように、個人が購入する一般市場においては、高価格帯でありながらも「選択肢」として定着しているのが現状です。
3. 給食という「選べない場」における公平性と政治的アプローチ
個人の自由意志で買える一般市場とは異なり、決定的な課題となるのが学校給食のような「子どもが自ら食事を選べない場」です。
食の安全や添加物にこだわりたいからといって、「家庭から毎日弁当を持参させる」という解決策には限界があります。
保護者の経済的・時間的負担が増すだけでなく、学校という集団生活のなかで子ども同士の比較が生じ、公平性や教育的な配慮の観点からも望ましいとは言えません。
だからこそ、ここには制度や政策を通じた「政治的なアプローチ」が不可欠になります。
自治体から広がる「オーガニック給食」の波
現在、国が一律で規制を強めるのを待つのではなく、地方自治体の首長や教育委員会が主体となって給食の無添加化・オーガニック化を進める動きが全国で増えています。
地元の有機農家と提携して無添加調味料や有機米を導入し、上がった食材費の差額を自治体の公費(税金)で補填することで、家庭の負担を増やすことなく質の高い給食を提供する取り組み(千葉県いすみ市など)が成果を上げています。

もちろん、行政がこれらを広げるためには、以下のような実務的なハードルをクリアしなければなりません。
- 予算配分(公費負担)の優先順位
- 地域全体へ均一に供給できる物流体制の確保
- 保存料を抑えることに伴う衛生管理・食中毒対策の強化

4. おわりに:安さと安全のバランスをどう考えるか
安価で美味しい食品を大量に流通させ、多くの人々の食生活を支えるうえで、食品添加物が果たしてきた役割は非常に大きいものです。すべてを即座に無添加・オーガニックに置き換えることは、コスト面や安定供給の面から現実的ではありません。
しかし、自ら食事を選ぶことができない子どもや乳幼児、妊婦といった脆弱な層に対して、どのような安全配慮を行うべきかという問題は、単なる「個人の好みの問題」として片付けるべきではありません。
国会議事堂のメニュー表記をめぐる一連の議論は、私たちがどのような食の未来を望み、限られた予算や資源をどこへ優先的に配分すべきなのかという、政治と社会のあり方を問い直すきっかけを与えてくれています。
最後に、日々食品添加物の供給や開発に携わる立場からお伝えしたいのは、添加物は決して安くかさましして利益を上げるためだけのものではないということです。
例えば弊社で扱うコンニャク粉を用いた製剤では、健康への影響を懸念されるリン酸塩を使わず、重曹や炭酸カルシウムといったより安心感のある原料を主構成にするなど、少しでも健康への影響を抑えるための技術開発と改善を重ねてきた歴史があります。
保存性を高めて食中毒を防ぐこと、食品ロスを減らすこと、そして誰もが手の届く価格で安全な食事を絶え間なく届けられること——これらは、国民の食生活と食料安全保障を支えるうえで欠かせない技術的基盤です。
なにかと悪とされがちな存在だからこそ、私たち事業者も「より安全で安心な選択肢」を追求し続けなければなりません。
すべてを排除するのか、過剰に頼るのかという極端な二元論ではなく、科学的な根拠と現場の技術工夫を踏まえ、「どこにどのような配慮を行うべきか?」を社会全体で冷静に議論していく時期に来ているのではないでしょうか。
ここまでご拝読下さり誠にありがとうございました。
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